Book Meter

読書の記録。読みっぱなしは勿体無い。

イノセント・デイズ 早見和真

「あなたが最後。あなたに必要とされなくなったら私は自ら命を絶ちます。」

執拗なストーカー行為の果て、交際相手の妻と双子の娘の住む家に火を放ち、3人の命を奪った死刑囚の女。残虐な犯行に至った女の生涯を彼女の人生にかかわった人物の視点から描く社会派ミステリー。

死刑執行の直前の場面、死ぬために彼女が見せた最初で最後の抵抗に強烈な生への執着が見られる。彼女はどこまでも純粋なのだと思う。妻を亡くして憔悴する養父を思いやる姿も、友人の未来のために罪を被ることも、暴力をふるう恋人に従う姿も、そして整形した理由も。一貫してどこかの誰かから必要とされるために自身を殺す姿に美しさを感じる。

ただ現実的な立場から物を言わせてもらうとそれは少し傲慢なのでは?と思わずにはいられない。なぜ自分を守るために動かないのか。他人に生きる意味を求める姿に人間としての本来の姿からかけ離れていると感じる。そのような歪んだ考えに至ったのは周りの環境のせいなのか?また、そのような行為を働くことで相手に残す傷跡を考えたことはあるのだろうか?誰しもが時に驚くくらい残酷になれるのと同じで変に罪への意識を持つことがある。いっそ自分勝手に振り回してくれたほうが記憶には残らないし割り切れるものもあると思う。明確な悪意を持って攻撃する相手にはこちら側も明確に身を守ることができる。しかし悪意なのか善意なのかわからない態度を取られたら?例えばひどく殴られた後に涙を流しながら土下座をされたら?相手を糾弾せず許してやろうかと思ってしまう。それを彼女は無意識のうちに行っているのではないか。もうこれは誰が悪いとかいう問題じゃない。私も自身の意見が必ずしも正しいとは思わないが、以上の点で違和感を感じた。